小さい頃から割と物理学者に憧れて、まあ昔は伝記とか色々と読んでまして、自分はあまり運動が得意ではなかったんで、武術に長けた強い人の伝記よりも科学者の伝記に憧れたんですね。特にアインシュタインの伝記を読んで感動しまして、将来物理学者になりたい、と、そういう風に思ってましたですね。それでずーと中学、高校ときて、ただ大学で生物関係に興味を持つようになりまして、専攻は物理なんだけれども少し生物寄りのことがしたい、となって大学院の研究室を選びました。そうしたら先生がですね、まあ生物物理は面白いけれども、生物物理をする前に、まずは高分子の勉強をしてみろ、というんで(笑)、高分子の勉強を始めて、それ以来ずっと高分子の研究をやっている、と、そういう感じですね。
まあそうですね、とかニュートンとかですね、物理学者に凄く憧れてましたね。
そうですね、今回の原発事故の影響を受けて、将来的には原子力から自然エネルギーへのシフトが進むと思います。
それは賛成なのですが、ただ自然エネルギーで全部やろうとするとまだ相当先が長いでしょう。4-50年くらいかかるんじゃないかと思います。自然エネルギーに代替していくうえで、実はすごく重要なのが材料の役割です。材料は多くの場合、パフォーマンスの決め手になるんですね。今回我々の作りだしたこの新しい材料についても、太陽電池や蓄電池向けに応用開発することで高度なパフォーマンスを発揮できる可能性も十分考えられますので、研究としてはそういったところにも注力していきたい、と思っています。
いや、特許制度はベルのときにはあったので、その頃には出来ていたと思います。というか、アインシュタインは特許局に勤めていたんですよ。アインシュタインは非常に天才的な人だったんですが、実は大学卒業したときに職がなくてですね、大学では誰も雇ってくれなくって、そこで特許局に勤めたんです。そうして特許制度に関わっているときに例の物凄い大発見の理論を全部作ったんですね。まぁそういうことで言うと、多分特許局っていうのは暇だったんじゃないかと思いますけど(笑)たぶん特許を出す人があまりいなかったんですね。
なかったですよ、そうそう(笑)特許制度なければあの発見はなかったかも知れない、非常に失礼ですけどね(笑)
じつは、我々の開発した技術には生物に近いという性質がありまして、スライドリング マテリアルの技術特性をアクチュエーターに使うという応用研究が進んでいるんですね。アクチュエーターというのは電気をつけて伸び縮みするような、いわゆる人工筋肉なんですが、動きをが人間の筋肉に非常に近いという意味では、もちろん純粋な生物物理ではないものの、生物、物理、化学の境界線領域にある研究であると私は感じています。このスライドリング マテリアルの構造というのは生物の持っているメカニズムとはもちろんまったく違うんですけれども、結果としては生物に非常に近いパフォーマンスを得ることができるんですね。さっき言った伸び縮みの仕方とか、“永久歪み”が小さいこととか、柔らかいけど元のかたちに完全に戻ることとか、そういった特性を人工筋肉に使うことでこれまでにないパフォーマンスを得ることができるんですね。なので、生体に近い要素が技術のどこかに顔を出す、というのがこの材料に関する研究の非常に面白いところかなと思ってますね。
私はですね、小さい頃にテレビで鉄腕アトムとかを見て育った世代なので、ああいうテクノロジーへの憧れがありまして、アクチュエーターで実際に人間型ロボットを作りたいと思っているんです。例えば、今のロボットは1kgの重さを持ちあげるのに100kgの体重が必要なんですね。つまり、家庭で1kgの物をロボットに持ちあげてもらいたいのならば、100kgの重いロボットを家庭の中に入れなければいけない、と。
なぜか?これはモーターを使っているからで、自重の軽いロボットは人間の筋肉のように重い物をラクラクと持ち上げることができない。
これでは、現実的に利用に適しているとはいえないわけです。だけど、スライドリング マテリアル技術を使ったアクチュエーターの場合、4gの重さで100gの物を持ちあげることができる。つまり、理論上は自分の重さの25倍の重さのものを持ちあげる力をもつことができるのです。それはまさに人間の筋肉と同じような、これまでにない動作なんですね。だから、もしそれをができれば、人間型ロボットというか、普通の体重のロボットでも十分家庭の中で有効な仕事ができるようになるわけです。
こういった研究にはそれこそ莫大な予算が必要になりますので、いつになるかはわかりませんが、ぜひやりたいと思っています。
まあ、その前にも実は身近な応用分野がありまして、例えば義手とか義足ですね。手足の一部を失った方がそれらを使って失われた機能を回復するためのリハビリ研究があるんですが、そこでも今はモーターが使われています。そうするとやっぱり重くて、非常に不便であると。そこに人間の筋肉と同じように軽いものが出来れば画期的ですし、人間の生体が本来持つ能力に技術が近づいていくというのは非常に面白いだけでなく、きわめて有用な研究になると思っています。
実はとてもシンプルで、基本的にはやわらかくて元に完全に戻る、という特性なんです。シンプルなのですが、そういう材料は今までになかったわけですね。そこに画期的な特性を持つスライドリング マテリアルという材料が世界で初めて生まれ、そのやわらかくて元に戻るという機能を使うことによって、そういう人工筋肉が実現できると考えています。
もちろん、その過程にはさらなる応用研究はもちろん、様々な要素がからんでくるわけですけれども、原理はシンプルですね。
ASMの物凄い強みなのかなと思うのですが、産学連携がこういった形で行われていることによる学問へのインパクトと、
産業へのインパクトについてはどのようなものがありますか?
産業へのインパクトについては先ほど申し上げましたように基盤的な技術なので、そこが変わるということは新しい価値を世の中にもたらすことを意味します。逆に言うと、新しい価値を一切生みださない技術であれば、基盤技術単体ではマーケットにおける存在価値はないわけです。だからこそ、価値ある技術が生まれるとき、そこには産業構造が変わる、もしくは新しい産業分野を生むくらいのインパクトをもたらす可能性があるわけですね。
学問分野に関しても、実はものすごく大きなインパクトがありまして、私の学術的な研究においても実はASMで日々明らかになる新しい応用がプラスに作用しているわけです。ASMの事業を通してクライアントから頂くフィードバックには、決して全て研究室で予測できたものだけではなく、予測外のものも実は驚くほど沢山あるわけですね。で、そうするとそれが一体どうしてそれが起こるんだろう、となり、そこから実際に学問的な研究がまた飛躍的に発展する、というプラスのスパイラルが産学連携の現場では日々起こっています。
たとえば、クライアント先で、どうして音を吸収するんですか、とか、実際聞かれますよね?そうすると、現象の確認はできていても、初期の段階ではその質問への答えを持っていない訳です。そうすると、じゃあどうしてそうなんだろう、ということで、実際に研究室での研究ピッチが上がるわけですね、そうすると今までにない原理原則が発見されたりします。
まさに応用の方から基礎のほうにフィードバックがかかって、相互の発展を更に促す、と。さっき言いましたように、両輪のようにどんどん応用が発展することによって、基礎もまた発展してゆく、こういう感じなのかな、と思います。
私の恩師の先生が言われたことなんですけれども、やっぱり基礎研究は応用が発展しないと伸びていかない、と。
ある時期流行るかも知れないけれども、その領域の基礎研究がどんどん伸びていくためには、それがやっぱり応用されていってこそ伸びていくんだ、と、常々おっしゃってたんですけれども。
私がまだ学生の頃の話なんですが、その頃はなんのことか全くわからなかったんですが、今となっては身にしみて感じますね。
まさにそう思います。ベンチャーをもし創っていなければ、あるいは特許を出していなければ、スライドリング マテリアルという新しい学問発の技術が産業界に応用されるまでには、長ければ20~30年はかかったと思います。
大学の基礎研究から生まれた新技術の場合、旧来はそのくらいの時間的な隔たりがあったわけです。研究室で発見されてから10年くらい経って少し応用の可能性が出てきて、それからさらに10年くらい経ってようやくそれが何に使えるかわかってきて、そこから産業界と一緒に量産に向けた研究開発が始まってさらに10年を経てやっと商品が出る、と。
そういった意味においては、スライドリング マテリアルの場合、学問的な研究成果が企業様との協業によって飛躍的なスピードで商品化されています。最初に当技術が携帯電話のコーティングに使われたのは会社を創ってから5-6年ですので、新たな材料事業研究がそれくらいの非常に短期間で商品化に成功した、というのは、産学連携の好事例であり、また事業としての成果の第一歩と捉えています。
私の近い分野のひとつの成功モデルとしては免震ゴムですね。私自身もともとゴムの研究に近いことをやっていたんですけれども、ゴムを使った免震ゴムというのがありまして、免震マンションとかに引かれているものなんですが、あれが最初に世の中に認められたのは阪神大震災のときなんですよ。
私が聞いた話では、あのとき、偶然この免震ゴムを利用した3階建ての建築会社の免震ビルが神戸に建っていたんです、震度計測の実験用に。地震のとき、周辺は震度7近くを計測したんですが、そのビルの3階の地震計だけは震度3を計測したんです。これは凄い、となって、それまで免震ゴムが引いてあるマンションなんて日本世界中にはほとんどなかったのですが、そこから一気に普及しました。
地震や天災って避けられないものだと思うんですけれども、それが新しい材料によって影響を受けなくなってしまう、これこそがイノベーションの真価といえるでしょう。その話を聞きながら、これはまさに世の中を変えるような素晴らしい技術だなと思ったのを覚えています。
今回の技術の発見も、今までなかったものがまさに生みだされ、世の中を変えてゆくような方向へ、そういう風に使われていくと非常に素晴らしいんじゃないかな、と思いますね。
そうですね、実は会社を創ったときはこれで自分も楽になるというか、何もしなくてもいいんじゃないかなあと思ったりしたんですが(笑)とてもそんなことがあるはずもないことがわかってきたので、一生かけてしっかり関わって行きたいなぁと。自分の子供と同じで、産みの苦労もありますが、成長していくのが楽しみでもありますね。
どんな苦労も、後からみれば楽しい想い出っていう風に「あのときは苦労したな~」で済めばそれでいいと思っています(笑)
私自身、これまで失敗は本当に沢山していますけれども、でも、幸いにして大きな失敗には至らなかったのかなぁと思いますね。
有り難かったですね。あのとき、別の方向を選択していたら危なかったなぁということは、何度もありましたけれども。
親身になって私を支えてくれた周囲の助言ですね。ただ、色んな意見や話を聞くと、どっちの考え方が正しいんだろう、とか結構迷うことも多いんですよね。
だから最終的な判断のところでは、自分はなぜ最初にこれがやりたかったのか、何のためにやろうとしたか、っていうこと、そこに戻って考えるようにしてきました。
Aというアドバイス、Bというアドバイス、どっちも良く聞こえるんですよ。でも、どちらを選ぶかによって全く違う方向に物事が進んでいく話になるので、どっちを選択するかって迷ったときには、自分はもともと何のためにこれをやっているのかってところを考えること、そして最後は自分の意志で選んできたのが良かったかな、と思います。
企業として大きく飛躍してゆくためには利益の追求ももちろん大事ですが、その前に、なぜこれをやりたいか、ということがあるわけですね。
だから、これからももっと大きく失敗することもあるかも知れませんが、やはり選択の場面では何のためにやるのか、という原点を忘れずにいけば、最終的には必ずうまく行くと信じてます。











